長崎県は2022年12月、「第2期長崎県ギャンブル等依存症対策推進計画」の素案を公表しました。
この素案では県内のギャンブル等施設の利用状況調査結果のほか、若年層へ向けた予防教育の必要性などが報告されています。
また、依存症診療ネットワーク体制を強化するために、IR建設予定地である佐世保市内に依存症の当事者らを支援する相談室も開設されました。
公営ギャンブルの売上は増加、パチンコ利用者は全国平均を上回る
この「第2期長崎県ギャンブル等依存症対策推進計画」の素案によると、県内の競艇場や競輪場、場外勝馬投票券発売所などの入場者数は減少しているものの売上は増加していることから、インターネット投票が増えているとみられています。
また、パチンコ・スロットなどの遊技場店舗数も減少傾向にありますが、県内20市町に132店舗がある状況から、人口10万人あたりの店舗数や過去1年間でパチンコを楽しんだ人の割合が全国平均より高いという調査結果も発表しています。
県はこれらのデータから、「ギャンブルが身近で気軽に楽しめる環境にある」との見解を発表。
「ギャンブルを始めた年齢が早いことが、ギャンブル等依存症へのリスクを高める」ということも調査により示されているため、今後は特に若い世代を対象とした予防教育に重点的に取り組んでいくとしています。
IR建設予定地に依存症相談室を開設、佐世保市内での支援を広める狙い
一方で、2019年度にギャンブル等依存症で県内の精神科病院に入院した患者数は14人、1回以上医療機関を受診した外来患者数は54人と、実際に受診をしている人は少ない状況となっています。
この報告から、県は依存症に該当する人でも医療機関を受診していなかったり、受診してもギャンブルに関する問題を主訴としていない可能性があるとの見方を示しています。
県内には依存症当事者に専門的な医療を提供する「依存症専門機関」が4施設あるものの、内3つが長崎市内に集中していて県北地区にはないため、県は居住地に関係なく支援が受けられるよう複数圏域での診療ネットワークの構築を掲げていました。
そこで長崎県は、依存症当事者らが暮らす回復支援施設を運営する「長崎ダルク」に県北地域依存症支援体制整備事業を委託。
2022年7月に佐世保市内で「長崎ダルク・させぼ相談室」を開設し、12月からは当事者や家族らが体験を語り合う「依存症ミーティングルーム」を開始しました。
この相談室には同法人のスタッフ2名が在駐し個別相談に応じるほか、必要に応じて医療機関等の紹介も行っています。
佐世保市は現在、県が誘致を目指すIR建設予定地となっていますが、依存症当事者らが集まり支援し合う自助グループなども少ないため、今後は相談室をきっかけに市内での支援活動の拡充も目指します。