大阪のIR予定地である夢洲の賃料について、鑑定額が適切であるかどうか、住民訴訟で争われています。
大阪地方裁判所では5月30日に口頭弁論が開かれ、原告の市民が意見陳述。「IRの収益を考慮しておらず、不当に安い」と主張しました。
鑑定額をめぐる住民訴訟の経緯
夢洲の賃料については、昨年大阪市が4社の不動産鑑定業者に鑑定を依頼し、4社中3社が月額賃料を428円と鑑定。鑑定士によって評価額に差異が出るのが一般的であることから、「3社で鑑定額が一致するのは不自然」「大阪市が誘導したのではないか」と疑念を抱く声が寄せられていました。
鑑定結果の違法性を指摘していた市民グループは、賃貸借契約の差し止めを求めて1月16日に住民監査請求を行いましたが、市は「合議不調」と発表。 この結果を受け、市民グループは「疑惑が払拭されていない」とし、4月3日に同じ趣旨での住民訴訟を起こしました。
大阪地裁に訴えを起こしたのは、大阪市に住む60代から80代の男女10名です。
【関連記事】大阪IR用地の賃料をめぐる住民監査請求について市が「合議不調」と発表
市は「適正価格である」と主張するも、条件議論はされず
市民らが特に問題視しているのは、土地の鑑定額について「IRを考慮外」としている点。訴状において、「IRの収益などを踏まえて賃料を算出する方法もあるのに、抜け落ちてしまっている」と指摘しました。
また、5月30日に開かれた口頭弁論では、原告10名の代表者が「市側の不動産鑑定がずさんだ。IRの収益を考慮しておらず、不当に安い」と意見陳述しています。
一方で市は、鑑定額は第三者の不動産鑑定士らで構成される「市不動産評価審議会」で承認されており、適正な価格であることを主張。
4月に大阪市長に就任した横山英幸氏も5月29日、記者団に対し、「賃料は正当な手続きの中で決めたものであり、見直す考えはない」と回答しました。
しかし、審議会は市が設定した条件下で価格が適正かどうか審議するものであり、条件設定そのものを議論する場は設けられていないことから、依然として鑑定額を疑問視する声が相次いでいます。
住民らの口頭弁論を受け、市は今年7月中には主張を明らかにするとしています。