12月10日、自民党・公明党の両党が令和3年度税制改正大綱を発表しました。
これまでの議論において、カジノに関する税制は、非居住者(外国人観光客)のカジノ所得を課税対象とするか否かが焦点となっていました。
今回決定された大綱では、シンガポールなどの国際基準に合わせて非居住者は非課税とし、国内居住者は課税とする方向でまとまっています。
また、カジノ売上の消費税や、法人税における顧客還元(キャッシュバック)の取り扱いについても、今回の発表で方向性が決定されました。
IR関連の所得税・消費税・法人税の方向性
IR・カジノ関連の税制について、今回決定となった内容は以下の通りです。
①所得税
- 非居住者のカジノ所得・・・国際的な競争力を確保することを目的とし、非課税とする。
- 居住者のカジノ所得・・・国内の公営ギャンブルと同様に課税対象とする。
- 居住者のカジノ所得について、支払調書の提出は求めない。税務当局が情報照会手続きを活用すること等を通じ、自主的な適正申告の確保を図る。
②消費税
- カジノ事業に関する課税仕入れについて、仕入税額控除制度の適用を制限
- カジノ事業の収入がIR事業全体収入の5%以下だった場合、仕入税額控除制度の適用が可能
- カジノ以外の事業に関する課税仕入れは、仕入税額控除制度の適用が可能
③法人税
各費用の課税上の取り扱いを明確化。
- 広告宣伝に用いる割引等のクーポン提供・・・広告宣伝費
- 賭け金額に応じ、一定の基準の元で行う顧客へのキャッシュバック・・・売上割戻
など
最も注目されていた所得税の扱いについて、一部のIR事業者からは「訪日客が非課税なのは当然のこと。日本人客も非課税にしなければ、海外のカジノに収益を奪われてしまう」と懸念の声もあがっています。
具体的な課税処理法については、令和4年度以降に最終決定となる見通しです。
IR税制に関する議論の経緯はこちら
国のIR基本方針 年内に決定予定
IR開業における大きな課題だった税制の大綱が決定したことを受け、政府はIR基本方針を年内に決定する予定です。
IR基本方針については2020年10月、IR区域整備計画の認定申請期間が9ヶ月延期となったことを踏まえ、政府が新たな方針案を公表していました。
今後決定される基本方針には、事業者とIRに関わる公務員の接触を厳格化する規定や、IR内での新型コロナウイルス感染症対策について盛り込まれる予定となっています。
IR開業に向け、政府が想定しているスケジュールは以下の通りです。
- 2022年以降、最大3箇所のIR区域整備計画を認定
- 環境アセスメントや都市計画の手続き期間:所要1~1.5年
- IR建設期間:所要3~4年
- IR開業予定:2020年代後半
ただし、2020年代後半の新型コロナ収束状況は不透明のため、期待されているIR収益の確保が可能かどうかは見通しが立っていません。
今後の状況次第で、随時スケジュール調整が行われることが予想されます。