政府は2020年12月18日、第7回IR推進本部会合を開催し、IR基本方針を正式に決定しました。
今回策定された基本方針では、候補地の選定基準やIR事業者等との接触ルール等が定められています。
また、IR区域認定の申請期間については、「2021年10月1日から2022年4月28日まで」と閣議決定されました。
政府はコロナ禍で先行きが不透明な状況下でも、2030年までに外国人観光客を6,000万人へ増やす目標を堅持。
菅義偉首相は「IRは日本を観光先進国としていくための重要な取り組み。必要な準備を着実に進める」と前向きな姿勢を強調しています。
整備地域の選定基準ならびにIR事業者との接触ルールを決定
今回決定された基本方針では、現職国会議員の汚職事件を受け、公務員とIR事業者の接触ルールに関する項目を設定。
IR事業者との面談は複数人で対応することや、面談内容を記録すること等が定められました。
また、自治体や事業者に対し、感染症やギャンブル依存症への対策を求める項目も追記されています。
さらに、以前から基本方針案として公表されていた最大3箇所の候補地選定基準について、「IR事業の公益性や地域における十分な合意形成を確保すること」などが記載されました。
今回決定された基本方針に基づき、引き続き区域整備計画の認定に向けた準備が進んでいく予定です。
IR基本方針決定を受けた各自治体のコメント
IR開業にあたっては、これまで横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県が誘致の方針を表明しています。
IR基本方針決定を受け、各自治体は以下のように所感や想定スケジュール等をコメントしました。
大阪府・吉村洋文知事「基本方針確定は歓迎」
大阪府・吉村洋文知事は政府の発表を受け「コロナ禍の現状ではあるが、先を見据えるとIRは大阪の経済成長に必要不可欠。基本方針が確定したことを歓迎したい」とコメント。
また、大阪市・松井一郎市長は「いよいよ本格的に動き出した。地域指定を勝ち取りたい」との意気込みを述べた上で、「以前考えていた2025年万博開催時のフルオープンは、コロナの影響もあり厳しくなった」と状況の変化を語っています。
大阪府・市の今後の想定スケジュールとしては、2021年1月に府の実施方針を確定し、同年夏から秋にかけて事業者を選定。
IR開業時期は2027年~2028年の方向で検討中ですが、今後の状況によって柔軟に対応する姿勢を見せています。
横浜市・平原敏英副市長「公正公平な事業者選定へ」
12月20日、YouTubeで配信された「横浜IRを考えるシンポジウム」の中で、横浜市・平原敏英副市長がコメント。
「国が定めた期間内に申請できるよう、まずは民間事業者の公正公平な公募・選定に取り組んでいく」との方向性を述べた上で、「IRによる横浜のさらなる飛躍を期待」と前向きな姿勢を強調しました。
横浜の今後のIRスケジュールとしては、RFP(事業者公募)募集要項発表を2021年初旬、事業者選定を2021年度中に予定しており、2020年代半ば以降の開業を目指しています。
和歌山県・仁坂吉伸知事「決定に安堵」
和歌山県・仁坂吉伸知事は、「当初の予定より1年程度後ろ倒しになったが、決定されたことに大変安堵している」とコメントしました。 和歌山県はRFPの締切を2021年1月15日までとし、同年春には事業者選定を行う予定。
開業時期の想定は2026年春頃としています。
長崎県・中村法道知事「早期に事業者公募を開始したい」
長崎県・中村法道知事は基本方針決定を受け、関係各所への感謝を述べた上で「2021年1月の早い時期に事業者公募を開始したい。引き続き長崎IRの実現を目指す」と意気込みを語りました。 今後、2021年1月中に募集要項を発表し、同年夏から秋にかけて事業者を選定予定。
2026年度前後のIR開業を目指します。
IR誘致検討中 東京・名古屋のコメント
IR誘致に関心を寄せていた東京都・小池百合子知事は、「今回決定された基本方針をベースに、引き続き総合的な検討を行っていく姿勢に変化はない」とコメント。
これまでもIR誘致について「メリット・デメリットの両面を踏まえて検討中」と慎重な姿勢を貫いてきた小池都知事ですが、今回もRFP予定やIR開業時期の想定については言及していません。
また、名古屋市・河村たかし市長は「コロナの現状を考えるとIR検討どころではない」と述べており、東京都と同じく、RFPやIR開業時期に関するコメントはありませんでした。
新型コロナウイルスの影響で1年ほど延期されていたIR基本方針の決定が行われ、開業に向けての計画が正式始動しました。
今後の状況次第でずれ込む可能性が考えられますが、現時点でのIR開業は2020年代後半頃が想定されています。