経済効果の高い娯楽として海外では既に馴染みのあるカジノですが、本場ラスベガスのカジノが成功し続けている理由の1つには、その特徴的な収益モデルが挙げられます。
実はこの”特徴的な収益モデル”は、今後日本がカジノを誘致するにあたって大きなヒントになるのではないかと考えられています。
本記事前半ではラスベガスのカジノの現状について言及し、後半では、ラスベガスの収益モデルを参考に、日本がカジノを含むIR施設事業を導入した際、どのようなメリット・デメリットが想定できるのかを考察しています。
ラスベガスのカジノの特徴やカジノ誘致のモデルに興味がある方は、ぜひご一読ください。
目次
ラスベガスにおけるカジノの収益モデル
ご存じの通り、2016年には日本でもカジノ法案が成立し、カジノ誘致の準備が着々と進んでいます。
では、日本が目指すべき収益モデルの先駆的な存在である、ラスベガスのカジノがどのように経済を牽引し続けてきたのかについて詳細を見ていきましょう。
バランス型の収益モデル
2015年~2017年のネバダ州の統計資料によれば、ラスベガスのカジノにおける収益源は、カジノのゲームによる収益が約40%です。
残りの約60%の収益は飲食やショッピング施設、イベントやショー、宿泊によるものとなっており、それぞれがバランスよく収益源として稼働していることを示しています。
ラスベガスと東南アジア諸国のカジノにおける収益モデルの違い
ラスベガスでのカジノゲームによる収益はおよそ40%でしたが、マカオやシンガポールなどその他のカジノ大国の収益内訳はラスベガスのものとは大きく異なります。
カジノゲームを収益の中心として稼働している例がマカオです。カジノゲームによる収益はなんと90%を超えています。
カジノゲーム各種のミニマムベットも他国に比べて高く設定されていることから、その内情が伺えます。
また、シンガポールは日本と同様に経済効果を狙い、2005年に初のカジノ施設が完成し、これまでもゲーム収益が高くなりすぎないように施設の工夫が施されてきました。
しかしながら、中国の経済成長によって生まれた富裕客が娯楽としてカジノを利用しやすい距離、環境にあることも関係してか、2015年~2017年のデータでのゲーム収益は70%以上となっています。
他にもカジノが有名な国は多々ありますが、東南アジアにおいては中国の富裕層が巨額をゲームに投じることから、ゲーム収益とその他の収益のバランスを図るも、ラスベガスのようなバランスの取れた収益内訳とはならなかったのです。
ただし、近年では中国の経済成長は鈍化傾向にあること、韓国やマレーシア、フィリピンなどアジア諸国でのカジノ新設で富裕層らが娯楽で使う資産が各国に分散されたことが相まって、従来アジアで通用してきたカジノのビジネスモデルは今後早い段階で破綻するのではないかという見解もあります。
ラスベガスにおけるカジノがもたらした経済効果と失敗
カジノがもたらす経済効果や懸念点については、カジノ法案成立前後に日本国内でも数多くの議論がなされてきました。
日本が目指すカジノであり、長年唯一のビジネスモデルで成長を続けるラスベガスのカジノを取り巻く現状がどうなっているのかを一度整理してみましょう。
ラスベガスのカジノによる経済効果
ラスベガスのカジノがもたらした経済効果として、次の3つが挙げられます。
- 新たな雇用の創出
- 特定の層に依存しない持続可能な収益モデル
- 文化の更なる発展が期待できる
これらは、ゲームを中心とした収益を狙っていては得られない経済効果であると言えるのではないでしょうか。
1.新たな雇用の創出
ラスベガスではカジノが誕生したことによって、カジノに直接かかわる雇用に加え、周囲の環境をつくる人材の雇用が増えたと言えます。
宿泊サービス、イベント、ショー・サーカス、飲食店、ショッピング施設…観光地の縮図とも言えるほど観光産業にまつわる雇用がカジノとの絶妙なバランスによって守られています。
2.特定の層に依存しない持続可能な収益モデル
カジノの街と聞くと、お金持ちの娯楽にあふれる街をイメージする人は少なくありませんが、ラスベガスは一味違います。
もちろんカジノを目的にラスベガスを訪れる観光客もいますが、一方でカジノ以外の観光を目的にラスベガスを訪れる観光客の存在も収益モデルの中で大きな役割を担っています。
3.文化の更なる発展が期待できる
ラスベガスがカジノを中心として成長してきたことは紛れもない事実です。
しかしカジノを取り巻く環境の一部として、文化が育ってきたということ、またそれらは逆にカジノへの誘客の一助となっていることも忘れてはならないポイントです。
イベントやショー、飲食店など、地域への誘客を街全体で取り組んできた功績として、現在の世界的にも発展した歓楽街を作り上げたと言っても過言ではありません。
非日常の街並みを体験するためにラスベガスを訪れた人がついでにカジノで遊んで帰っていく、そんな相互作用もラスベガスのカジノの特徴です。
ラスベガスのカジノにおける失敗点
一方で、ラスベガスのカジノの歴史を振り返ると確かに反省すべき過去・実態も見られます。以下3点はその中でも特に代表的なものです。
- 反社会勢力の関与によって治安が悪化
- 運営開始まで正確な収益の予想が難しい
- ギャンブル依存症がネバダ州は他州の約2倍
ただし、これらはカジノを取り巻く環境にはどの地域でも予想されることであり、収益モデルに起因するものではないということを押さえておきたいところです。
1.反社会勢力の関与によって治安が悪化
反社会勢力の関与はラスベガスのカジノの歴史を辿ればすぐに知ることができます。 今でこそ一般企業が運営に携わっていますが、ラスベガスにできた初めてのカジノはマフィアによって作られたものでした。
もちろん収益はマフィアの資金源となりますから、集まる客は一般人のみというわけにはいかず、マフィアや犯罪に手を染める人間が行き来していたことは否定できません。